Chapter 1 of 1

Chapter 1

秋の暮れ

嵐山夕べ淋しく鳴る鐘に

こぼれそめてし木々の紅葉

桂小五郎揮亳を需めける時示すとて

ゆく春も心やすげに見ゆるかな

花なき里の夕暮の空

こゝろからのどけくもあるか野辺ハ猶

雪げながらの春風ぞ吹

丸くとも一かどあれや人心

あまりまろきはころびやすきぞ

奈良崎将作に逢ひし夢見て

面影の見えつる君が言の葉を

かしくに祭る今日の尊さ

父母の霊を祭りて

かぞいろの魂やきませと古里の

雲井の空を仰ぐ今日哉

ゑにしらが艦寄するとも何かあらむ

大和島根の動くべきかわ

常磐山松の葉もりの春の月

あきハあはれと何をもいけん

世と共にうつれば曇る春の夜を

朧月とも人は言ふなれ

土佐で詠む

さよふけて月をもめでし賤の男の

庭の小萩の露を知りけり

伏見より江戸へ旅立つとき

又あふと思ふ心をしるべにて

道なき世にも出づる旅かな

淀川を遡りて

藤の花今をさかりと咲きつれど

船いそがれて見返りもせず

泉州名産挽臼

引臼の如くかみしもたがはずば

かかる憂目に逢はまじきもの

●図書カード

Chapter 1 of 1