Chapter 4 of 6
山霧
麦車馬におくれて動き出づ
向日葵の蕋を見るとき海消えし
日光遊草四句樺の中奇しくも明き夕立かな
枯山を断つ崩え跡や夕立雲
蓬生に土けぶり立つ夕立かな
滝音の息づきのひまや蝉時雨
中禅寺湖より戦場ヶ原への途上山霧や黄土と匂ひて花あやめ
戦場ヶ原三句隠沼は椴に亡びぬ閑古鳥
虚国の尻無川や夏霞
郭公や国の真洞は夕茜
風鈴の空は荒星ばかりかな
桑の実や馬車の通ひ路ゆきしかば
駅路や麦の黒穂の踏まれたる
ころぶすや蜂腰なる夏痩女
籬根をくゞりそめたり田植水
大雨に鏡も濡れし田植かな
沢の辺に童と居りて蜘蛛合
干に睡たき蛇の来りけり
朝ぼらけ水隠る螢飛びにけり
花うばらふたゝび堰にめぐり合ふ
月雲をいづれば燃ゆる蚊遣かな
さきだてる鵞鳥踏まじと帰省かな
岩水の朱きが湧けり余花の宮
山の蚊の縞あきらかや嗽
桔梗や褥干すまの日南ぼこ*
蝉時雨つく/\法師きこえそめぬ
苔の雨かへるでの花いづこゆか
楓のしゞの垂花いつかなし
山青しかへるでの花ちりみだり