Chapter 8 of 60
八月十二日
曇―晴。
宵から夜明けまでぐつすりと熟睡した、――きのふもけふもつつましくすなほであつた。手足を撫でて、肥えた々々々と思ふ、肥えても痩せても身心の平安が何よりも望ましい。
今日は久しぶりに夏らしく、残暑もさうとうきびしかつた、良寛和尚の口吻を借れば、夏は暑いのがよろしく候。
久しぶりに――半年ぶりに、層雲へ出句、逓友への随筆は書けなかつた、いや、我儘な私は気乗しないので書かなかつた、また一つ嘘をいつた、恥づべし恥づべし。
ポストまで出かけて帰つてゐると、来客二人、灯火骨君と友人、パンとタバコを頂戴したのはうれしかつた。
――純麦飯よりも食パンの方がおいしいことは現前の事実である。
夜ふけるまで不眠、無門関第五則「香巌上樹」、初めて読む公案である。