Chapter 1 of 3

茶の花

庵のまわりには茶の木が多い。五歩にして一株、十歩にしてまた一株。

私は茶の木を愛する、その花をさらに愛する。私はここに移ってきてから、ながいこと忘れていた茶の花の趣致に心をひかれた。

捨てられるともなく捨てられている茶の木は『佗びつくしたる佗人』の観がある。その花は彼の芸術であろう。

茶の木は枝ぶりもおもしろいし、葉のかたちもよい。花のすがたは求むところなき気品をたたえている。

この柿の木が其中庵を庵らしく装飾するならば、そこらの茶の木は庵の周囲を庵として完成してくれる。

茶の花に隠遁的なものがあることは否めない。また、老後くさいものがあることもたしかである。年をとるにしたがって、みょうが、とうがらし、しょうが、ふきのとうが好きになるように、茶の木が、茶の花が好きになる。

しかし、私はまだ茶人にはなっていない、幸にして、あるいは不幸にして。

梅は春にさきがけ、茶の花は冬を知らせる(水仙は冬を象徴する)。

茶の花をじっと観ていると、私は老を感じる。人生の冬を感じる。私の身心を流れている伝統的日本がうごめくのを感じる。

茶の花や身にちかく冬が来てゐる

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