Chapter 1 of 44

春の日の夕暮

トタンがセンベイ食べて

春の日の夕暮は穏かです

アンダースローされた灰が蒼ざめて

春の日の夕暮は静かです

吁! 案山子はないか――あるまい

馬嘶くか――嘶きもしまい

ただただ月の光のヌメランとするまゝに

従順なのは 春の日の夕暮か

ポトホトと野の中に伽藍は紅く

荷馬車の車輪 油を失ひ

私が歴史的現在に物を云へば

嘲る嘲る 空と山とが

瓦が一枚 はぐれました

これから春の日の夕暮は

無言ながら 前進します

自らの 静脈管の中へです

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