Chapter 1 of 1
Chapter 1
神よ、私は俗人の奸策ともない奸策が
いかに細き糸目もて編みなされるかを知つてをります。
神よ、しかしそれがよく編みなされてゐればゐる程、
破れる時には却て速かに乱離することを知つてをります。
神よ、私は人の世の事象が
いかに微細に織られるかを心理的にも知つてをります。
しかし私はそれらのことを、
一も知らないかの如く生きてをります。
私は此所に立つてをります!……
私はもはや歌はうとも叫ばうとも
描かうとも説明しようとも致しません!
しかし、噫! やがてお恵みが下ります時には、
やさしくうつくしい夜の歌と
櫂歌とをうたはうと思つてをります……
(一九二九・一二・一二)
●図書カード