Chapter 1 of 6

○ Rationalist の論

先生は書かれるものには、「とも考えられる」とか、「かも知れない」というような表現を始終用いておられるが、話をされる時には、特に少数の集りの場合には少し熱がはいってくると、随分はっきりと物をいわれたものであった。

僕はこの頃になって、科学者は総ての問題に口を入れて、決して恥しくないという自信を得たよ。この頃ネーチュアに、scientist という言葉がいけない、rationalist とした方が良いという意見が出ていたが、その通りだと僕も思う。科学者というものは、宜しく rationalist すなわち合理的に物を考える人にならなければいけない。特に物理をやる者は、物の理を学んでいるという気持を始終失ってはいけない。少し極端なようだが、僕はどんな学問をやるにも物理が必要だと思うね。物の理を知らなくては学問は出来ないからな。ところが専門の物理学者になってしまうと、かえって物の理を忘れてしまうことがあるから、その点はよほど注意していなければいけない。ネーチュアに rationalist の論が出た時、色々の人の意見をきいていたが、その返事の中に、ラサフオードが自分はアマチュアである、決して professional scientist ではないという回答をしていたが、大いに我が意を得たりと思ったね。あれでなくちゃいけない。

実験なんかでも、あまり勉強ばかりしていると、つい目を瞑って研究をするようになるから、よほどその点は注意する必要がある。いつでもアマチュアの気持を失わずに、楽しみながら、始終目を開いて仕事をしなければいけない。それがすなわち rationalist なんだよ。

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