Chapter 1 of 1

Chapter 1

落とした一銭銅貨

新美南吉

雀が一銭銅貨をひろいました。

雀はうれしくてうれしくてたまりません。

ほかの雀をみると、

「ぼくおかねをもってるよ。」

といって、くわえていた一銭銅貨を砂の上においてみせてやりました。

さて、日ぐれになりました。すこしくらくなってきました。

「や、遊びすぎちゃった。これはたいへんだ。」

と雀は、一銭銅貨をくわえて、おおいそぎで水車小屋の方へとんでいきました。この雀は水車小屋ののきばにすんでいたのでありました。

まだ水車小屋につかないまえ、はたけの上をとんでいたとき、あまりあわてたので、雀は銅貨を落としてしまいました。

「や、これはしまった。」

けれどあたりはもう暗くて、雀の目はよくみることができなくなっていたので、

「あしたの朝さがしにこよう。」

といって、そのまま水車小屋の巣にかえりました。

その夜はたいへん寒かったので、雀はかぜをひいてしまいました。

それもそのはず、雪がどっさりふったのでありました。

雀はかぜがなかなかなおらないので、まいにち藁の中にくるまって、落とした一銭銅貨のことを思っていました。

やがて雀はよくなりました。そこで一銭銅貨をさがしにいきました。

まだ雪ははたけの上につもっていました。

「わたしの、わたしの一銭銅貨、この下にいるのかい。」

と、雀は雪の上からききました。

すると雪の下から、

「いえいえ、ここにはありません。」

とだれかがこたえました。

雀はまたべつのところへいって、

「わたしの、わたしの一銭銅貨、この下にいるのかい。」

とききました。

するとまた雪の下から、

「いえいえ、ここにはありません。」

とこたえました。

雀はあちらこちらとたずねてあるきました。

するととうとう、

「はいはい、ここにありますよ。雪がとけたらおいでなさい。」

とこたえました。

雀は雪のとけた日にまたはたけにやっていきました。銅貨はちゃんとありました。

みるとはたけにはいっぱいふきのとうがでていました。銅貨のあるところを雀におしえたのはこのふきのとうだったのでしょう。

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