Chapter 1 of 47

著者より

うるほひのない生活は死灰である。人生は死灰ではなかつた。

民謡は、ただちに民衆と握手し、民族生活の情緒をつたふ唯一の郷土詩であり、土の自然詩である。

民衆の握手もなく、人生にもたらすうるほひもなく、郷土的色彩もなき作品は、われらの欲する詩ではなかつた。

極楽蜻蛉は、いささかなりとも民族生活の情緒をつたへたい、わが小民謡集である。

民謡は、心読の詩ではない、耳の詩である、音楽である。本集には本居長世、中山晋平両氏の作曲による作品が多い。藤井清水氏の作曲による作品も十数篇ある。そのほか、梁田貞、室崎琴月両氏の作曲。佐藤千夜子外二三嬢の作曲による作品も数篇加へてある。

こころの涸渇は民謡によつて救はれ、民衆の感情も民謡によつて救はれるのである。民謡は社会教化の上にも、強い力をもつてゐたのであつた。

民謡は限られた階級文芸ではない。土の上の詩人によつて発見される民衆の詩である。

民謡は国民詩である。

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