Chapter 1 of 8

プロローグ

小説家大磯虎之助は、奇談クラブのその夜の話し手として、静かに壇上に起ちました。

まだ三十を幾つも越していない筈ですが、一と頃人気の波に乗って、文壇の一角から、その同志達に号令をかけていただけに、なんとなく老成した感じの、やや旧式な美成年でした。

「これは私の友人の経験した話で、決して大衆小説の筋のように、奇っ怪なものではありませんが、この少しばかりロマンティックな話の中から、人間の心の奇怪至極な動きと、花恥かしい処女の成し遂げた、驚くべき恋の冒険の醍醐味を味わって頂き度いと思います」

大磯虎之助は、こう言って、さて話の本筋に入ったのです。

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