Chapter 1 of 6

銭形平次の住居は――

神田明神下のケチな長屋、町名をはっきり申上げると、神田お台所町、もう少し詳しくいえば鰻の神田川の近所、後ろは共同井戸があって、ドブ板は少し腐って、路地には白犬が寝そべっている。

恋女房のお静は、両国の水茶屋の茶汲女をしたこともあるが、二十三になっても、娘気の失せない内気な羞かみやで、たった六畳二た間に入口が二畳、それにお勝手という狭い家だが、ピカピカに磨かれて、土竈から陽炎が立ちそう。

そのくせ、年がら年中、ピイピイの暮らし向き、店賃が三つ溜っているが、大家は人が良いから、あまり文句をいわない。酒量は大したこともないが、煙草は尻から煙が出るほどたしなむ。お宗旨は親代々の門徒、年は何時まで経っても三十一、これが、銭形平次の戸籍調べである。

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