Chapter 1 of 1

Chapter 1

鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに

ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。

人夫よ はやく夏草を刈りつくせ

狼火をあげよ 烟を空にたなびかせよ

空想の陣幕を野邊にはつて

まぼろしの宴樂をほしいままにせよ。

ああこのばうばうたる白日の野邊を訪ねて行つても

むかしの失はれた幸福に出逢ひはしない。

大風の吹く城の向うで

化猫草の穗のゆらゆらとうごいてゐて

なにものか

かなしい追憶の敵が笑つてゐる。

●図書カード

Chapter 1 of 1