Chapter 1 of 3

部屋の中で

はかなくうら悲しい日が続く。万象を浮せる一切の光線は湿つて仄暗い。夕闇のやうに沈んだ少年の眼は空間にゆらぐ幽かな光線を視つめる。空気に映つた光線は静かに一つの映像を刻んで行く。光線は盛り上り広まり伸びて鮮明な像を少年の眼に映す。少年の眼はやがて閉されて心に映つた幻像の動きに見惚れる。じつと、じいつと視つめる少年の心が宙に浮き上つて空間をさまよふ。われを忘れんとした間髪、少年の眼はうるんで、ほろりと落ちる。数葉の枯葉のひとつひとつが、きらりと光つた露となつて眼に映る。切なげな溜息の一つが不意に出る。溜息が薄白く丸まつて又しても新しき像を築く。首を振つて幻を消さんとする努力も空しい。溜息は再び少年の口中にせり上つて来る。三度の溜息が口に上つた時少年は立ちあがつて歩き始める。

Chapter 1 of 3