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トリガーセンの妻 コーンウォール物語
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トリガーセンの妻 コーンウォール物語
ホワイトフレッド・M
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번역 Pagera AI
원문 Public Domain
Chapter 10 of 40

第九章 限界

ポートグィンは、ルースが語った状況と同じだった。花々がしおれており、花々を生活の基盤にしていた人々は聖地に頼らざるを得なくなった。でも、ほとんどの人はまだ聖地へ行っておらず、食料と燃料が小屋にある限り、行かないだろう。

ポートグィンは美しい場所であり、荒々しい起伏に富む盆地になっており、緑の盆地に海が食い込む様子は、きらきら光る銀の槍を突き立てたかのよう。そこに海水が泡立ち、鳴き砂に打ち寄せている。

砂浜には岩が段々に重なり、押し寄せる波の浸食に絶えず冒されて穴だらけになっており、岩棚の上方に草花や木々が植わり、丘の斜面を彩っている。

平らな台地のあちこちに白い家が建っており、フクシアの木々で屋根が隠れ、家の背後には庭園があり、直前までキズイセンやスイセンやラッパスイセンが生い茂っていた。

多くの家が朽ちており、広い部屋は、隠花植物で覆われている。一世代、いやもっと前に廃墟になっており、事実ニシンが捕れなくなって以来だ。魚の梱包部屋はもう不要となり、炉壁は冷えて、鳥たちがひさしに巣を作っている。荒涼、美麗、伝記的で、もの悲しい。しかしもっと悲しい事態がやってくる。

太陽がギラギラ輝き、波が鳴き砂に打ち寄せており、そこで子供達が賑やかに遊んでいる。だが、小屋の前では女達が目に絶望感を浮かべて座り込んでいた。メアリとミリアムはその内の一人に近づいた。1日か2日前にルースの紹介で知り合いになっていた。近づくと、だるそうに目を上げた。

「最悪なのですか」

とメアリが訊いた。

静かな答えがあった。

「ええ。1日か2日前に、ここの庭園を心配しておられましたね。さあ、ご自分で見て下さい」

二人は小屋の側面を回り、背後の影になったところへやってきた。斜面には土壌がいくらかむき出しになっており、整然と区切られた茶色の土地に、しおれて元気のない植物があり、あちこち黄色や白い稲穂が立っていた。五月霜が降りた前後、花盛りのりんご園を見た人なら、この意味が分るだろう。これがポートグィン岬沿いの庭園の状況だった。

ミリアムが言った。

「とても悲しいことです。でも、ちっとも心配することはありません。とうぜん、ここらの庭園は全部同じです。哀れなジェニファの所へ行って話しましょう」

ジェニファの所もやや厳しかったが、前にもあったことだし、状況は充分わかっていた。楽じゃないが、施しを受けるつもりはない。ジェニファは若妻であり、小さな子供が二人、聖地の救護所より自宅のほうが好きだった。だが、トリガーセンを非難することなど考えられなかった。

「ここで同じ経験をされたのですか」

「ええ、何もかも失いました。メアリ、何も残りませんでした」

ジェニファが独特の挨拶をしたのち、体を前後に揺らした。ミリアムは深く同情した。

ミリアムが言った。

「ここには11家族います。もし聖地へ行かず、同じ生活を続けたら、1週間当たりいくら必要ですか」

ジェニファが即座に、9シリングで充分だと答えた。仲間全員なら、1週間当たり5ポンド、つまり年間2百ポンドで快適、幸せに暮らせる。その金額はメアリが通常1回の舞踏衣装に使うお金だ。1年に1回新調ドレスを諦めれば、ことは足る。腹を決めて古いドレスを着るならば、もっともほぼ3ヶ月でデザインは恐ろしく時代遅れになるのだが、トリガーセン島の全員が次年度花の収穫まで、実際の不足分以上になるだろう。ミリアムが明るくうなずき、あたかもメアリが口頭で提案したかのよう。

メアリが穏やかに言った。

「やりますよ。聖地へ行く必要はありません。縮れ毛の赤ちゃんと、ここへ居て下さい」

ジェニファはうなずいたが、嬉しそうでなかった。聖地へ行けば子供と別々にされる。無慈悲な陽光の下、霜の気配を含みつつ、子供達が砂浜で騒いでいた。子供達はここに居た方が良いだろう。だがトリガーセンは聞く耳を持たないだろう。

「恐ろしい、そんな考えをするとは」

とジェニファ。

メアリが諭した。ミリアムの顔もこわばり、叫んだ。

「あなた、奴隷ですか。トリガーセンの言いなりになって。トリガーセンはひどい自尊心がありますから、失敗を認めない限り、あなたの面倒は見てくれませんよ。他の人々はとっくに反発しています。支配者かも知れませんが、人々に飢餓を強いる権利はありません。私が会いに行って、提案を聞かせます。もし霜が再び降りて、花が全滅したら、どうなります?」

「飢饉になります」

このあきらめの境地は、前に経験したならではだ。ミリアムはジェニファの手を握っていいものか、肩を揺すっていいものか、分らなかった。激しい怒りがわき起こり、とりわけトリガーセンに対してだ。もし誰もついてこなかったら、赤旗を振っても何の意味があるか。ルースとトリタイアがいるが、力になりそうにない。

ところでトリガーセンは見つからなかった。島に関連することで本土へ出かけていた。盆地では大急ぎで花の収穫が行われた。あと一日おいた方が良いのに切ってしまう理由は、警告が来て、再びティンタジェルに赤い光が見えたからだ。また日没直前に、通り雨が降り、あられが混じっていたからだ。天気に詳しくない人でも、夜霜が降りると予想できる。

メアリとミリアムは、ルースとトリタイアの所へ行って、対策を話し合った。

「明日はどうなりますか」

とメアリが訊いた。

トリタイアが頭を左右に振って言った。

「悪くなります。ともかく霜だと思いますし、いまの通り雨で決定的です。赤い空と、ティンタジェルの照り返しを見て下さい。あれは凶兆です」

ティンタジェルは紫の夜霧に夢をむさぼり、肩口が雲に隠れている。まだ夕日が大壁を照らし、瑠璃色と深紅の後光をうっすら染めている。

トリタイアが続けた。

「あれは見たくなかった。あれは嘘をつかない。あの光りの後は必ず霜が降ります。時々無事なこともあり、乾き霜はめったに害を及ぼしません。でもこれは湿り霜になります。葉っぱや花がびしょ濡れですから。明日の今頃は全滅でしょう」

メアリが計画を打ち明けた。ある程度のお金を寄付するという。少額だが、次に良くなるまで島民が乗り切るには充分だろう。もしトリガーセンが嫌えば、無視しなければならない。トリタイアは熱狂したが、楽観はしていなかった。トリガーセンは拒否するだろうから、トリガーセンが拒否するほどに島民も拒否して、メアリのお金には一銭も触らないだろう。

トリタイアが言った。

「僕もできる限り尽くします。良ければトリガーセンと戦いましょう。でもねじふせてはいけません」

メアリは秘宝のことを考えたが、黙っていた。

黄褐色のかんぬきが夜明けの独房から外れたのは、メアリが夢から覚めて、誰かが扉を叩いていたからだ。ルースが呼んでおり、声色には深刻な悲劇の響きがあった。

「外へ出て見て下さい。盆地の花が全滅です」

メアリがサッと着替えて、ミリアムと出かけた。晴れて素敵な朝だが、空気がぴりっと冷たく、無数の露が草に光っていた。海は深い青色を呈し、砂はますます黄金色だ。トリガーセン島は四季の中でも桃源郷になったかのようで、とてもすばらしい。

だが、当てにならない桃源郷だった。盆地へ降りると、全島員が集まり、湿り霜の影響を見ていた。5万坪以上がぞっとするほど変わりはてている。もはや揺れる花々はなく、空中に漂う香りは、つんと刺す海の臭いだけだ。目の届く限り、褐色の葉っぱが落ちているばかりで、あたかも野獣の群れに踏み荒らされた湿地のよう。霞む風景をメアリが眺めれば、当分靄しか見えない。そばに居た腰の曲がった老人に向かって、訊いた。

「全滅ですか」

「そうじゃ。飢饉じゃ。1年の内で一番いいときに飢饉じゃ。メアリよ、逃げるが一番じゃ。ここに留まっちゃ駄目だ、運命を知ることじゃ。トリガーセン島には蝶々の居場所はない、今夏もな」

老人の話しぶりはやや荒っぽくて、たぶん感情を隠したのだろう。メアリは同情するばかり。

メアリがやさしく言った。

「蝶々でさえ役に立ちますよ。いや、手伝わせてもらえば、喜んでそうします。私には使い切れないお金があります。もし、よければ……」

「俺たちゃ、乞食じゃねえ、メアリ。金を受け取れん理由は……」

「自分の稼ぎじゃないからでしょう。では稼がせてあげましょう。私が、施しのパンを食べなさいと、トリガーセン島民を侮辱すると思いますか。自力で多くのことが出来ます。トリガーセンはその為の準備をすべきです。何の権利があって島民を飢餓という危険に晒さねばならないのですか、いろんな方法があるというのに。申し訳ないですが、答えてくれませんか、アベル」

アベルはあいまいだ。たぶん、かすかな明かりが意識の中に点灯している。

ルースがやってきて、最後の言葉に間に合い、その後、周りに小集団が集まった。大勢を前にして、ほっとした感情があった。ルースの目が輝いた。出来たらトリタイアがルースを止めただろうが、遅すぎた。

ルースがおおっぴらに話したので、澄んだ空気にのって、遠くまで聞こえた。

「そんな権利はありません。もしこのことで島民が死んだら、前にも死んだことがあったけど、トリガーセンに全責任があります。繁栄と快適の両方を預けているのに、トリガーセンは背を向けています。観光客も産業も何もない。なぜ? 島に金が入ると、島民が堕落するからです。例えば編み物があります。二人のレディが私達を利用すれば、材料と市場があります。いまこそ編み物を作る意思があれば、飢饉は二度と起こりません。なのにトリガーセンは馬鹿にして拒絶します」

「トリガーセンが来るぞ」

と警告の声がした。

「来てください。私の言い分を聞かせましょう。トリガーセン、金貨が待っているのに、私達は飢えるのですか」

「金貨は持たせない」

とトリガーセンが不機嫌に言った。

トリガーセンが集団に割ってはいり、頭を傲然と上げて、目が光っている。ミリアムの眼も、眼鏡の奥で光っていた。

ミリアムが言った。

「失礼ですが、ここでお金を稼げることは充分承知でいらっしゃる。それに実直に働いて稼げることも」

「島民は嫌いだと思う。島民に訊いてくれ」

ミリアムが取りかかった。百対の眼に向かって、話をした。島民の眼には不安と願望があり、ミリアムが協力を呼びかけたが、誰一人として動かなかった。話が終わったとき、トリタイアとルースだけが大賛成したのみであった。

トリガーセンが叫んだ。

「きみか。きみが私の妻になる人か」

トリガーセンが一幅の絵のように気高く怒って、つかつかと歩み寄り、あたかもルースの手首を掴むようにして、引っ張った。このとき中世風の封建領主トリガーセンが感じたのは、予定妻ルースが領主の意志に敢然と反対したことだ。

メアリもこの時点でルース同様、領主に感心しなかった。怒れる独裁者とトリタイアの間に割り込んだ。トリタイアの日焼けした顔が妙に青白くなっている。

メアリが落ち着き払って言った。

「ルースはあなたの妻になりません。トリガーセン、私の提案を認めないというのは厳然たる決定ですか」

「誰も私の決定を覆せません」

メアリが辺りを見回して半ば期待したのは、群衆がトリガーセンに押し寄せてズタズタに引き裂くことだった。だが誰も動かなかった。意欲が全然なく、ただあるのは深いあきらめだけであり、全員そうだった。

メアリが静かに言った。

「わかりました。それでは、運命が遣わされたものを使わざるを得ません。すぐに謁見して下さい。皆様方にお願いですが、内密に拝謁させて下さい。単なる一個人が君主に請願するにはそれが正しい方法だと思います。陛下、もったいなくも、宮殿へご案内いただけますか」

Chapter 10 of 40
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