Chapter 1 of 34

プロレタリアの少年少女へ

貧しい子供たちよ。

おぢさんは、みんなが大へん可愛い。この本は君たちに讀んでもらひ、歌つてもらうために書いたのだ。金持の子供なんか讀まなくたつていい。

おぢさんは君たちのお父さんやお母さんと同じやうに貧乏だ。そして君たちのやうな元氣な可愛い子供を持つてゐる。去年は六つになるスミレといふ女の子を一人亡くした。それはおぢさんが貧乏なために、金持の子のやうに大切にしてやられなかつたからだ。だがおぢさんにはまだ二人の子供がある。もしこの二人が死んでしまつても、おぢさんはまだ/\氣を落しはしまい。それは元氣な君たちが大勢ゐてくれるからだ。それほどおぢさんは君たちを、自分の子のやうに思つてゐる。

おぢさんは永いこと、いつも、君たちにいい本をこしらへてあげたいと思つてゐた。けれど貧乏では本も書けない。今度やつとのことで、この本をつくることができた。けれどこれは手はじめで、そんなにいいものとは云へない。第一、本が高すぎる。それに童謠だつて、まだほんとうに君たちに好かれないかも知れない。けれど君たちは金持の子や、金持の味方の詩人やまたそいつらと一しよに貧乏人を馬鹿にしてゐる奴らのやうに、このおぢさんの童謠を一も二もなく、頭からバカにし、惡口なんか云はないだらう。きつと、おぢさんの子供やおぢさんを好いてくれる子供たちと同じやうに、よろこんで讀んでくれ、よろこんで歌つてくれるにちがひない。

そこで、わたしの好きな子供たちよ。おぢさんはみんなとお約束しよう。この次に出すおぢさんの本は、きつといい本で、もつと安くすること、を。

で、今度は君たちから、おぢさんにお約束をしてもらひたい。と云ふのは、おぢさんに前の約束をきつと守らすためには、君たちはこの本をよく讀んで、そしてその中の一番好きな歌とか、嫌ひな歌とか、この歌はこんな時に使つたらどうだつたとか、今度はこんな時に歌ふこんな歌を作つてほしいとか、そう云つたことをドシ/\手紙かハガキかで、云つてよこしてもらひたい。また君たちの作つた歌もぜひおくつて見せてほしい。も一つ。この本は自分ひとりでは讀まないで、なるべくお友だちみんなに見せ、讀ませ、貸してやるやうにしてもらひたい。そしてみんな仲よく、元氣に、大勢で歌ふことだ。――これを是非お約束してもらひたい。

ではみんなよ、早く大きくなつて、君たちも勇敢なプロレタリアの鬪士となつて、君たちや君たちのお父さんお母さんを苦しめてゐる奴らを叩きのめしてくれ!

東京府下吉祥寺四八〇一千九百三十年四月槇本楠郎

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