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透明人間
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ウェルズハーバート・ジョージ
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Bản dịch Pagera AI
Nguyên bản Public Domain
Chapter 2 of 34

なに者だろう?

男は、じつによく食べた。

カーテンをひいて、へやがうす暗くなると、それで安心したのか、食卓につくと、まるで三日も四日もたべずにいたかのように、皿のなかの物をかたっぱしからたいらげていった。

黒馬旅館のおかみさんは、なんとも気もちのわるい客をとめたもんだと、考えこんでいたが、この男がまさか怪物であろうとは気がつかない。ぶっきらぼうで、ぶあいそうな客だとはおもうが、なにしろ先払いで宿料に二枚の金貨をわたしている。わるい気もちはしなかった。

(あの人はかわいそうな人なんだよ、きっと! ひどいけがをしてるらしいよ。どこで、どんなけがをしたか知らないが、かわいそうに……。だけど、ほうたいだらけのまっ白なあの顔には、ぞっとするわ。まるで化けものみたいだもの)

おかみさんは台所の暖炉の火で、客のオーバーや長ぐつをかわかしながら、そんなことを考えていた。

(ナプキンで口をかくしているところをみると、口のまわりに、大けがをしたんだよ。ぞっとしたりしては、気のどくだわ)

しばらくして、おかみさんが食事のあと片づけに客室にはいっていくと、客はパイプでたばこをくゆらしていた。顔の下半分にはマフラーをまきつけて、パイプを口にさしこむのに、マフラーをゆるめようとはしないで、口もとをかくすようにしてパイプを吸っていた。

暖炉の火が青めがねにうつって、赤々とゆらいでいるが、どんな目をしてこちらを見ているか、とおもうと、やはり、ぶきみさが先に感じられてくるのだった。

めずらしく、客のほうからしゃべった。

「ブランブルハースト駅に、荷物をおいてきたんだが、どうやったら取りよせられるね?」

「おや、それはおこまりでしょう。さあ、この雪では……それに、こんな田舎ですからね。たのむといって、すぐに、人手がいいあんばいにございませんわね」

男はほうたいだらけの頭で、うなずいていたが、

「こまるなあ。どうしても、きょうじゃあだめかね?」

と言った。

「きょうじゅうには、むりでございますよ」

「あすになるか? なんとか早く、とどけさせる方法はないものかな? 馬車ならいってこられそうなものだが……」

がっかりしたようすで、なおもつづけた。

おかみさんは、この雪ではとてもだめだろうと、客のようすを探るようにながめながら、説明した。

「それがむりなんですよ。このうら山には、とてもけわしい場所がありますんでね、馬車なんか通れやしませんよ。去年でしたか、馬車がひっくりかえりましてね、お客さんと馬車屋が死にました。とんだ災難で、まあ、こんな日には、おやめになったほうがようござんすね」

「なるほど、災難って、そういったもんかね」

男はそれいじょう、たってたのもうとは言わなかった。

「マッチをとってくれんか」

パイプをマフラーのあいだから口にさしこんで、おかみさんからマッチをうけ取った。そしておかみさんに背をむけると、窓ぎわにいって、カーテンのすきまから中庭の雪をながめたまま、ひとことも口をきこうとはしない。おかみさんは、はっとして、へやをでていった。

ふしぎな男は、夕がたまで、へやにとじこもっていた。

Chapter 2 of 34
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