Chapter 1 of 1

Chapter 1

僕はまいにち、隣の信ちゃんと、学校へいきます。僕は、時計屋の前を通って、大きな時計を見るのがすきです。その時計は、時刻が正確でした。

また、果物屋の前で、いろいろの果物を見るのもすきです。どれも美しい色をして、いいにおいがしそうでした。

僕は、肉屋の前を通るのがきらいでした。だから、なるたけ、店の方を向かないようにして通りました。人間のため働いた牛や馬を食べるのは、かわいそうなことのように思います。

もう一つ、こまることがありました。魚屋の前に、いつも、赤い、強そうな犬がいることです。

この犬は、よく人にほえました。また、自転車に乗った人を追いかけました。だから、いつ、自分にも、ほえつくかもしれないからです。

「犬なんか、こわくないよ。」と、信ちゃんはいいました。

しかし、僕は、ひとりのときは、まわりみちをして、肉屋と魚屋の前を通らないようにしました。

ある日、信ちゃんは、僕に向かって、

「もう明日からは、いっしょに学校へいかれないね。」といいました。

それは、信ちゃんの組が、午後からになったためです。

僕は、悲しくなりました。そうして、二人が魚屋の前にくると、ちょうど、赤犬とよその子供が遊んでいました。

「君、その犬はどこの犬なの?」

勇敢な信ちゃんが、聞きました。

「さあ、どこの犬かな。いままで飼っていた人がいなくなって、うちがないのだよ。くつ屋のおじさんが、かわいがっているから、くつ屋の犬だろう。」と、男の子が、答えました。

「名は、なんというの?」

「赤といっているよ。」

「人に食いつかない?」

「かまわなければ、食いつきなどしないさ。」

「よくほえるだろう。」と、僕がいいました。

「おかしなようすをした人に、ほえるよ。」と、そばにいた女の子が、答えました。

信ちゃんは、犬のそばへいって、頭をなでてやりました。

「清ちゃんも、なでておやりよ。」と、信ちゃんが僕にいいました。

僕はこわくて、どうしてもなでる気になれませんでした。

「なでてやると、君になれるよ。」と、また、信ちゃんがいいました。

僕がまごまごしているのを見て、よその男の子が、笑っていました。すると、女の子が、

「いやなのを、むりにすると、食いつくかもしれないよ。」といいました。僕は、なでるのをやめました。

あくる日、僕が、ひとりで学校から帰ると、赤が尾をふって、僕のそばへやってきました。僕はうれしかったので、

「赤や、赤や……。」といって、赤の頭をなでてやりました。

このごろ、僕は、学校のいきかえりに、赤を見るのが、たのしみです。そうして、その姿を見ないときは、さびしい気がします。

僕は、女の子のいった言葉を、いつまでも忘れません。

●図書カード

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