Chapter 6 of 6
六
左翼戦線が十数年来無意味の分裂抗争に、時間と精力とを浪費したる後、漸く暴力革命主義を精算して統一戦線を形成したる時、右翼の側に依然として暴力主義の迷夢が低迷しつつある。
今や国民は国民の総意か一部の暴力かの、二者択一の分岐点に立ちつつある。此の最先の課題を確立すると共に社会の革新を行うに足る政党と人材とを議会に送ることが急務である。二月二十日の総選挙は、夫れ自身に於ては未だ吾々を満足せしめるに足りないが、日本の黎明は彼の総選挙より来るであろう。黎明は突如として捲き起これる妖雲によって、暫くは閉ざされようとも、吾々の前途の希望は依然として彼処に係っている。
此の時に当たり往々にして知識階級の囁くを聞く、此の〔暴〕力の前にいかに吾々の無力なることよと、だが此の無力感の中には、暗に暴力讃美の危険なる心理が潜んでいる、そして之こそファッシズムを醸成する温床である。暴力は一時世を支配しようとも、暴力自体の自壊作用によりて瓦壊する。真理は一度地に塗れようとも、神の永遠の時は真理のものである。此の信念こそ吾々が確守すべき武器であり、之あるによって始めて吾々は暴力の前に屹然として亭立しうるのである。
●図書カード