Chapter 7 of 37
『今宵のあるじ』
銘器『今宵のあるじ』は友の家に珍藏する古銅の花瓶なり
古代なる花がめ、
花のつゆしづきて、
みどりなる古銅の
さびや、いとうるはし。
たとふれば寂寞の
谿のおく、垂れてぞ
さきぬべき夕月、
その青き一瓣か。
こだいなる花がめ、
花にこそ四季あれ、
人にこそさかりの
榮、くらきおとろへ。
人の世は、ああ、これ
『宿命』の花がめ、
ここにしてしをるる
にほひ、日にまた夜に。
よろこびの、愁ひの
雫したたり添ひ、
そのおもに殘せる
痕をだに、見よ、いざ。
いと古き花がめ、
花の魂やどりて
誰を招ぐ『今宵の
あるじ』、――ああ、まらうど。