Chapter 1 of 11
序
黒檜の沈静なる、花塵をさまりて或は識るを得べきか。
薄明二年有半、我がこの境涯に住して、僅かにこの風懐を遣る。もとより病苦と闘つて敢て之に克たむとするにもあらず、幽暗を恃みて亦之を世に愬へむとにもあらず、ただ煙霞余情の裡、平生の和敬ひとへに我と我が好める道に終始したるのみ。
「黒檜」一巻、秘して寧ろ密かに我といつくしむべく、梓に上して些か我が真実の謬られむことをおそる。他に言ふところなし。
庚辰孟夏
白秋
黒檜の沈静なる、花塵をさまりて或は識るを得べきか。
薄明二年有半、我がこの境涯に住して、僅かにこの風懐を遣る。もとより病苦と闘つて敢て之に克たむとするにもあらず、幽暗を恃みて亦之を世に愬へむとにもあらず、ただ煙霞余情の裡、平生の和敬ひとへに我と我が好める道に終始したるのみ。
「黒檜」一巻、秘して寧ろ密かに我といつくしむべく、梓に上して些か我が真実の謬られむことをおそる。他に言ふところなし。
庚辰孟夏
白秋
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