Chapter 1 of 1

Chapter 1

ある村に、ひとりのまずしいおばあさんが住んでいました。おばあさんは豆をひとさらあつめて、煮ようと思いました。そこで、おばあさんはかまどに火をおこす用意をしました。そして、火がはやくもえつくように、ひとつかみのわらに火をつけました。

おばあさんが豆をおなべにあけるとき、知らないまに、ひとつぶだけおばあさんの手からすべりおちました。その豆は、床の上のわらのそばに、ころころところがっていきました。すると、すぐそのあとから、まっかにおこっている炭がかまどからはねだして、このふたりのところへやってきました。

すると、わらが口をきいて、いいました。

「おまえさんたち、どこからきたんだね。」

炭がこたえました。

「おれは、うまいぐあいに、火のなかからとびだしてきたんだよ。こうでもしなかったら、まちがいなしにおだぶつさ。もえて、灰になっちまうにきまってるもの。」

こんどは、豆がいいました。

「あたしもぶじににげてきたわ。あのおばあさんにおなべのなかへいれられようものなら、ほかのお友だちとおんなじように、なさけようしゃもなく、どろどろに煮られてしまうところだったのよ。」

「おれだって、にたりよったりのめにあってるのさ。」

と、わらがいいました。

「おれの兄弟たちは、みんなあのばあさんのおかげで、火をつけられて、煙になっちまったんだ。ばあさんたら、いっぺんに六十もつかんで、みんなの命をとっちまったのさ。おれだけは、運よくばあさんの指のあいだからすべりおちたからいいけどね。」

「ところで、おれたちはこれからどうしたらいいだろう。」

と、炭がいいました。

「あたし、こう思うのよ。」

と、豆がこたえました。

「あたしたちは運よく死なずにすんだんですから、みんなでなかよしのお友だちになりましょうよ。そして、ここでもう二度とあんなひどいめにあわないように、いっしょにそとへでて、どこかよその国へでもいきましょう。」

この申し出は、ほかのふたりも気にいりました。そこで三人は、つれだってでかけました。

やがて、三人は、とある小さな流れのところにやってきました。見ると、橋もなければ、わたし板もありません。三人は、どうしてわたったものか、とほうにくれてしまいました。

わらがうまいことを思いついて、いいました。

「おれが横になって、ねころんでやろう。そうすれば、おまえさんたちは橋をわたるように、おれのからだの上をわたっていけるというもんだ。」

こういって、わらはこっちの岸からむこうの岸まで、からだを長ながとのばしました。すると、炭は生まれつきせっかちだったものですから、このできたばかりの橋の上を、むてっぽうに、ちょこちょこかけだしました。ところが、まんなかまできて、足の下で水がざあざあながれる音をききますと、どうにもこわくなって、そこに立ちすくんでしまいました。もうひと足もすすむことができないのです。

そのうちに、わらはもえだして、ふたつに切れて、流れのなかへおっこちました。炭もあとから足をすべらせて、水のなかへおちました。そして、ジュウッといって、命をうしなってしまいました。

豆は用心ぶかく、まだこっちの岸にのこっていましたが、このできごとを見ますと、おかしくって、わらわずにはいられませんでした。ところが、そのわらいがいつまでたってもとまりません。豆はあんまりひどくわらったものですから、とうとう、パチンとはじけてしまいました。

ですから、もしもこのとき、旅まわりをしている仕立屋さんが、運よく、この流れの岸べでやすんでいなかったなら、豆もほかのふたりとおなじように、死んでしまうところでした。

仕立屋さんは、なさけぶかい人でしたから、さっそく針と糸とをとりだして、豆のからだをぬいあわせてやりました。豆は仕立屋さんに、あつくあつくお礼をいいました。けれども、仕立屋さんがつかったのは黒い糸でしたので、それからというものは、どの豆にも黒いぬいめがついているのです。

●図書カード

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