Chapter 1 of 1
Chapter 1
生と死の路は今自分の行手にあり自分はこの全き方向のちがった路の何れを歩んでいるかを知らない歩む路は一すじただこの一すじが生命の歓喜へ向っているかまた永遠の死へ辿っているか自分にも解き得ざる謎謎の日は今、日毎つづきつつある
だが博士は言った「半年か一年か保証は出来ないがね」ここで自分の歩む路は死だと予断されているも一人の博士はただ眉をひそめて「生死の問題よりも苦痛よりのがれる方法を」と自分の言葉を認めて麻薬で劇薬の注射を与えて去った又も一人の医師は言う「もう手おくれだ どこもかしこも悪いただ死は時日の問題だ」
自分はすべての医師に絶望を語られお前は死の路を歩むでいるのだと言われてその儘に自分の生命力が博士達の想像と同一であるとは信じない信じたくない。博士達にだって幾月幾日に断定出来ないからだだ
ただ自分の生命は非常に死に近づいている、死の手に引かれるか又再び生の力に引上げられるかあぶなげなわが生命 はかなきわが生命わが今歩める路は果して何れか
一九三五・五・七
●図書カード