Chapter 1 of 1

Chapter 1

光つて泉の湧くそばに

僕の小さな窪がある。

僕の丈ほどふかくない。

はりえにしだなど生えてゐる。

夏には夏の花が咲く。

黄つぽい花や赤い花。

泉を僕は海と呼ぶ

あたりの丘を山と呼ぶ。

そんなに僕は小いのだ。

僕はつくつた舩や町。

僕はさがした洞や穴。

洞や穴には名をつけた。

あたりのものは僕のもの、

頭の上の雀でも、

泉の中の小ばやでも。

ここでは僕は王様だ。

僕は蜂どもうたはせる。

僕は燕をあそばせる。

ここより広い海はない。

ここより大きな原はない。

僕よりほかに王はない。

けれど日暮が来た時に、

母さんの声が呼びに来た。

「坊やお帰りごはんだよ。」

窪よさよなら僕のくぼ。

泉さよなら、よい水よ。

花もさよなら僕の花。

そしてお家にきて見れば、

何て大きな乳母だらう。

何て冷い部屋だろう。

●図書カード

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