Chapter 1 of 1
Chapter 1
春の訪れをまっ先に知らせてくれた
黄色に輝くたんぽぽの花よ、
いま恍惚と夢見るように
まっしろな球形の頭を微風になびかして
音もなくふっわりと羽蟻のごとく飛びゆく数々の種子は
青空の彼方へ
飛び行く種子よ!
周囲に呻吟するおれの希望を、思想を
雁のごとく伝波せよ
そして来たるべき春に
雨・風・嵐に打ち勝って
工場の屋根に、野原に、ビルディングの窓に
鮮やかな黄色な花を開け!
(獄中から鶴巻盛一宛書簡一九三〇年五月十四日付 『陀田勘助詩集』を底本)
●図書カード