Chapter 1 of 1

Chapter 1

忌々しき「死」の大君は慈悲の敵なり、

昔より悲の母、

かたくなに、言向けがたき司かな。

われも心に「憂愁」の種を播かれぬ、

いざさらば憂ひて已まじ

この舌の君さいなみに倦みぬとも。

われ今ここに君が身をつゆばかりだに

慈悲無しと思ふものから、

まがごとの大凶事と、君が罪

鳴して責めむ。世の人も知らぬにはあらず、

しかすがになほ憤り、

けふよりぞ「愛」の惠に歸依すべき。

いと美しき禮讓はこの塵の世を捨てたるか。

をみな心の麗しき徳性さへもうせにしか。

わかき命のまさかりに、

「愛」の色香を毀ちたる憎き「死」の神。

この淑女の誰なるを、ここに語るは憚れど、

そが本性の氣高きを述べたればこそ人知らめ。

後世の福得べき身ぞ

天つ御空に此君を仰ぎ見すらむ。

●図書カード

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