Chapter 1 of 4
一
自然科学に関する話題にも子規はかなりの興味を有って居たように思われる。当時自分は訪問してそういう方面のどんな話をしていたかは思い出せないが、ただ一つ覚えていることがある。ある時颱風の話からそのエネルギーの莫大なこと、それをどうにかして人間に有益なように利用するようにしたいというようなことを話したら、大変にそれを面白がった。暴風の害を避けようというのでなくて積極的にそれを利用するというのは愉快だと云って喜んでいた。
写生文を鼓吹した子規、「草花の一枝を枕元に置いて、それを正直に写生していると造化の秘密がだんだん分って来るような気がする」と云った子規が自然科学に多少興味を有つという事は当然であったかも知れない。
『仰臥漫録』に「顕微鏡にて見たる澱粉の形状」の図を貼込んであるのもそういう意味から見て面白い。
とにかく、文学者と称する階級の中で、科学的な事柄に興味を有ち得る人と有ち得ない人とを区別する事が出来るとしたら子規はその前者に属する方であったらしい。この事は子規という人とその作品を研究する際に考慮に加えてもいいことではないかと思う。