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二三年来、問題に触れて書いて来た社会評論の内から、手頃と思われるものを選んで、出版することにした。私はかねてから、批評の任務は努めて客観的公正を守るということにあると信じている。観察者には色眼鏡があってはならない、事実そのものをして語らせなければならないのである。

尤も又私が信ずる処によると、評論は如何なる場合にも文学的特色を有っていなければならない。その結果、この小著にもまた私自身の特色のようなものが、自然と出ている。だが、思うに私というものは、現代日本に於ける民衆のただの一人であって、別に変った人間ではない。私の言論は多少とも通用する筈だと信ずる所以だ。

一――六は思想界一般について、七――一一は自由主義反対の動きについて、特に一二――一四は国体明徴問題について、一五――一七は農村対策の問題について、一八――二〇は経済財政の問題について、夫々思想問題の角度から論じたものである。

一九三六・一二

東京戸坂潤

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