Chapter 1 of 1

Chapter 1

半缺けの日本の月の下を、

一寸法師の夫婦が急ぐ。

二人ながらに 思ひつめたる前かゞみ、

さても毒々しい二つの鼻のシルヱツト。

生白い河岸をまだらに染め抜いた、

柳並木の影を踏んで、

せかせかと――何に追はれる、

揃はぬがちのその足どりは?

手をひきあつた影の道化は

あれもうそこな遠見の橋の

黒い擬宝珠の下を通る。

冷飯草履の地を掃く音は

もはや聞えぬ。

半缺の月は、今宵、柳との

逢引の時刻を忘れてゐる。

●図書カード

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