Chapter 1 of 10

朝早くから、子供たちは、みんな、政雄の所に集りました。

「早く行かうよ。」

待ちくたびれてゐる所へ、政雄が出て来ました。

「さあ、行かう。」

政雄をまん中にして、一かたまりになつて出かけました。

政雄は、白ぬりの舟をかついでゐます。おもちやの舟です。おもちやですけれども、長さが三メートルもある大きな物で、ぜんまいじかけのきかいがついてゐて、ねぢをまいて水に浮かべると、ひとりでに動き出すのです。東京のをぢさんから送つて来た物です。

今日は、みんなで、その舟の進水式をしようといふのです。進水式ですから、きれいな場所を選ばなければなりません。

ちやうどよい所があります。村はづれの岡のふもとの、八幡様のわきの池で、片がはは木がこんもりとしげり、もう片一方は、草の生えた土手です。その池には、ひとりでにわき出る水が、いつも、きれいにすんでゐます。

政雄たちは、舟をかついで、そこへやつて行きました。

ところが、びつくりしました。

池の水がにごつてゐるのです。いつもは、きれいにすんで、底まですつかり見通され、ふなや、はやが、泳いでゐるのもよく見えてゐました。それが、今日は、一面ににごつて、きたなくなつてゐるのです。

どうしたのでせう。池の中に、何か、へんなものがゐるのでせうか。これでは、まつ白い舟の進水式は出来ません。

「どうしよう。」

みんなは、さうだんしました。

「僕は、ほかで進水式をするのはいやだ。」

と、政雄はいひました。

それで、池の水がすみきるまで待つことにしました。

でも、早く進水式をやりたいのです。夕方来て見ると、大方すんでゐたので、明日は大ぢやうぶのやうです。

翌朝、みんなは、また、元気を出してやつて来ました。

ところが、また、にごつてゐるではありませんか。

「へんだなあ。」

「どうしたのだらう。」

「水鳥かしら。」

「かはうそかな。」

よくしらべて見ると、土手の草が、あちらこちら水にぬれてゐます。

「きつと、何か、あやしい物がゐるのだよ。」

「さうだ、つかまへてやらうよ。」

舟の進水式は二三日のばして、そのあやしい物をつかまへることにしました。

元気な子供たちです。

三四人づゝかたまつて、うすぐらい夕方や、ぼうつとした夜あけ方、見まはりましたが、見つかりません。

「きつと、夜中に出るのだよ。」

ところが、夜中は、ちよつとこはいのです。どうしたらよいかと、みんな考へました。

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