Chapter 1 of 1

Chapter 1

疲れやつれた美しい顔よ、

私はおまへを愛す。

さうあるべきがよかつたかも知れない多くの元気な顔たちの中に、

私は容易におまへを見付ける。

それはもう、疲れしぼみ、

悔とさびしい微笑としか持つてはをらぬけれど、

それは此の世の親しみのかずかずが、

縺れ合ひ、香となつて籠る壺なんだ。

そこに此の世の喜びの話や悲しみの話は、

彼のためには大きすぎる声で語られ、

彼の瞳はうるみ、

語り手は去つてゆく。

彼が残るのは、十分諦めてだ。

だが諦めとは思はないでだ。

その時だ、その壺が花を開く、

その花は、夜の部屋にみる、三色菫だ。

●図書カード

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