Chapter 1 of 10

第三の話の選手

「道具立てが奇抜だから話が奇抜だとは限りません。私の秘蔵の奇談は、前半だけ聞くと、あり来りの講釈種の如く平凡ですが、後半を聞くと、聊斎志異か剪灯新話にある、一番不思議な話よりも不思議な積りです。どうぞ、途中で――何んだつまらない――なんて仰しゃらずに、最後の一句までお聴きを願います」

第三の「話の選手」増田晋は、斯う言った調子で始めました。

「――娘心を捉えしは誰そ――という存分にロマンチックな標題を掲げて、私の話は、いきなり享保二年の早春、江戸神田橋外の舞台に移ります」

奇談クラブの集会室は、夢見るような微光の中に、春らしく更けて行きます。

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