Chapter 1 of 9
朗らかなローマンス
「皆様のお話は、面白いには相違ありませんが、少し陰惨過ぎて、胃の腑の為には宜しくなかったように思います。其処へ行くと私の話は明るくて、朗らかで、お伽話のように浪曼的ですが、決して小説や作り話ではありません。悉く今八郎さんの仰しゃる、切れば血の出るような事実談です。私が経験したことを私が話すのですから、これほど確かなことはありません」
第七番目の話の選手水島三吾は斯う言った調子で始めました。仙波興業株式会社の若い取締役で、利け者と評判を取った男ですが、打ち見たところは、思想家などによくある、少しばかり皮肉な感じのする、聰明そうな好い男です。