Chapter 1 of 1

Chapter 1

記憶をたとへてみれば

記憶は雪のふるやうなもので

しづかに生活の過去につもるうれしさ。

記憶は見知らぬ波止場をあるいて

にぎやかな夜霧の海に

ぽうぽうと鳴る汽笛をきいた。

記憶はほの白む汽車の窓に

わびしい東雲をながめるやうで

過ぎさる生活の景色のはてを

ほのかに消えてゆく月のやうだ。

記憶は雪のふる都會の夜に

しづかな建築の家根を這ひまはる

さびしい青猫の影の影

記憶は分身のやうなものだ。

●図書カード

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