Chapter 1 of 2

△寒水

春なれば小椿おちて山吹の黄をもつ流その流背戸を走れるいまやせたり、

木がらしの行方もしらにさはさはと音する枯草のひびき寂寞の影をやどせば敗れ岩ところどころに冬を行くいささ小川の悲しげなりや。

曾てこの河に漁どりすべくいとむつまじき二人のうなゐありき、

されどその事たえたる今にして蓼の香さむきあしたには寒水のほとりうら悲しき笛の音をきくものありと云ふは何ぞや。

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