Chapter 1 of 1

Chapter 1

ものごころ覺えそめたるわが性のうすらあかりは

春の夜の雪のごとくにしめやかにして

ふきあげのほとりに咲けるなでしこの花にも似たり

ああこのうるほひをもておん身の髮を濡らすべきか

しからずはその手をこそ

ふくらかなる白きお指にくちをあて

やみがたき情愁の海にひたりつくさむ

おん身よ

なになればかくもわが肩によりすがり

いつもいつもくさばなの吐息もてささやき給ふや

このごろは涙しげく流れ出でて

ひるもゆふべもやむことなし

ああ友よ

かくもいたいけなる我がものごころのもよほしに

秋もまぢかのひとむら時雨

さもさつさつとおとし來れり

●図書カード

Chapter 1 of 1