Chapter 1 of 6
Chapter 1
これからする話を小説に書いてくれないかね、と玉本寿太郎がいった。
玉本は開戦初期の比島戦でトムプソン銃にやられて左脚を四分の三ほど短くされたが、終戦後は、じぶんからなんとか局の通訳を買って出て、毎日いそがしそうにしている。
「まあ、やめておく」と私がいうと彼は、「みょうなやつだな、終いまで聞きもしないで。君はいつか『日本人としても立派な日本人は、アメリカ人になっても立派なアメリカ人になるだろう』といったことがあるな。その実例を話そうというのだ。事実だぞ面白い話だぜ」
といいながら、私の顔にウイスキーくさい息をふっかけた。それが本場物らしいすっきりとしたいい匂いだったので私はいっそう気を悪くした。
「ひとりで本物のウイスキーを飲んで、ひとに匂いだけ嗅がせるやつも相当気むずかしいやつだ」
玉本は、やあと頭を掻いた。
「ああ、そうか。前渡でもおれのほうはかまわない」
義足をひきずりながら奥から一逸を持ちだしてきて、それを煖炉棚のよく見えるところへ置いた。
以下、玉本の話をするままに書く。