Chapter 1 of 1

Chapter 1

近頃では、アイスクリームなんてものは、年がら年中、どこででも売っている。そば屋にさえも、アイスクリームが、あるという。

私たちの子供のころは、アイスクリームなんてものは、むろん夏に限ったものだったし、そうやたらに売っているものではなかった。

中流以上の家庭には、いまの電気洗濯機がある程度に、アイスクリームをつくる機械があって、時に応じて、ガラガラとハンドルを廻して、つくったものである。

そのころのアイスクリームってもの、どういうものか、今のより、ずっと黄色かった。卵がうんと入っているように見せて、そんな色を着けたのかも知れない。

映画館の中売りが売って歩いたのは、正にその黄色で、牛乳も何も入っていない、名前も、アイスクリンだった。

アイスクリームよりも、もうちょっと安いのが、ミルクセーキ。

これはたいていの氷屋に、一種の運動機具のごとき機械があってこれも手廻しで、註文に応じて、つくった。

アイスクリームも、ミルクセーキも、その名は、そのまま今も残っているが、味は全く違ったものになった。昔のは、もっと原始的な味だったが、素朴でよかった。

硝子の玉をつないだ、氷屋ののれんも、今はあんまり見られなくなったが、昔は、氷屋ののれんから夏が来たものだった。

大阪の氷屋と東京のと、どう違うか?

東京では、コップの底に、タネモノ(シロップなり小豆なり)を入れて、その上へ、氷をかいて積み上げる。

大阪では、(小豆なんかは、やっぱり底にあったかな?)氷をかいて山にして、その上からシロップをかける。

見た目は、赤や青で美しいが、私たちは、やっぱり東京流がいい。

大阪といえば、ミルキンというのがあるのを御存知かしら。ミルキンとは、ミルク金時の略。金時とは、東京でいう氷小豆だ。その氷小豆の上から、ミルク(牛乳のところもあるが、コンデンスミルクを溶いたものが多い)を、ジャブジャブと、かけたもの。

こいつは、くどいだろうと思ったが、ちょっと試みると、確かにくどいけれど、うまい。

でも、お代りしたら、きっと腹を下すだろうと思った。が、意地きたなしの僕は、お代りをした。そして、予想通り腹下しをした。

大阪の氷屋に、「すいと」と書いてあった。

「すいと」とは何だろう。すいとんのことでもなさそうだし――と、きいてみたら、ところてんだった。

ところてんを、酢糸とは、シャレてる。

●図書カード

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