夏
虞美人草のしきりに曲り明易し
妓家明易き人の出入や麻暖簾
半夜能登輪島町羊多楼居に入る旅人みな袴をぬぐや明易し
明易や雲が渦まく駒ヶ嶽
青嵐や主従あきし麦の飯
大寺のうしろ明るき梅雨入かな
梅雨風や濁りて懸る金魚玉
葭切や郭公や梅雨の風に飛ぶ
日もすがら木を伐る響梅雨の山
梅雨の海静かに岩をぬらしけり
梅雨晴や鵜の渡り居る輪島崎
薬師立山しばらく見えし梅雨入哉
雫してわれからぬれぬ梅雨の松
梅雨の川芦一本にまがりけり
士朗居門前の二本の柿や梅雨さわぐ
蝶来るや梅雨の晴間の五葉松
菱刈りの面を叩く夕立かな
日盛や門前に打つ箔砧
別離人の面を流るゝ涙五月闇
しら/\と明けて影濃し旱雲
朝夕瓜もみ食ふ旱かな
夏山や吊橋かけて飛騨に入る
浴衣着て帯胸高や弱法師
果物の汁の飛びたる浴衣かな
老師に対す羅に人肌見えて尊とけれ
祭過ぎぬ木を挽く響隣より
先哲の墓に詣るや夏帽子
鮓の石金輪際に据ゑにけり
麦飯をぼろ/\食ひて涼しけれ
立山のかぶさる町や水を打つ
松の木に庭師来て居り昼寝覚
蚊の落つる音の嬉しき油団哉
を吹き飛したる畳かな
夏火鉢膝頭より大いなり
日除して青田に沈む小家かな
舟よりも大いなる日除漕ぎ行けり
昨日より日除をしたり農学校
月さすや沈みてありし水中花
月見草萎れし門に帰省せり
緑児の眼あけて居るや田植雲
田祭や蚤取粉打つて小百姓
箱の如き庭下駄のあり夏座敷
杉箸を染むるはなにか夏料理
寂寞と一汁あつし夏料理
夏料理ほゝけ防風反りを打つ
油蝉朴にうつりて鳴かざりき
教会の桜の毛虫焼かれけり
美しき毛虫を掃くや山の寺
毛虫焼く人の見ゆるや庭の奥
宝念寺毛虫居たり竹の手すりの仮本堂
町を出てみな高声や螢狩
鮎を贈る二三点鮎とぶ君がほとりかな
藤の芽を撓めて落ちぬ雨蛙
残暑に堪ゆ蛇の衣奥田の宿に脱がれけり
越中笹津合歓咲くや此処より飛騨の馬糞道
笋の頭の見ゆる若葉かな
花桐や重ね伏せたる一位笠
某寺庫裡杖もつて花ざかりなる茨かな
病葉や石にも地にも去年のやう
西瓜食ふやハラリ/\と種を吐く
人の居て葛の葉ゆれぬ木下闇
白ばかり咲きてけうとや立葵
咲き上げて紅勝ちぬ立葵
青あせて葵の蕾残りけり
白葵大雨に咲きそめにけり
罌粟坊主雨を湛へてこぼしけり
咲きやんで雛罌粟雨に打たれ居り
白罌粟の花より高し罌粟坊主