Chapter 1 of 1

Chapter 1

ひとひははかなくことばをくだし

ゆふべはいづちの組合にても

一車を送らんすべなどおもふ

さこそはこゝろのうらぶれぬると

たそがれさびしく車窓によれば

外の面は磐井の沖積層を

草火のけむりぞ青みてながる

屈撓余りに大なるときは

挫折の域にも至りぬべきを

いままた怪しくせなうち熱り

胸さへ痛むはかつての病

ふたゝび来しやとひそかに経れば

芽ばえぬ柳と残りの雪の

なかばはいとしくなかばはかなし

あるいは二列の波ともおぼえ

さらには二列の雲とも見ゆる

山なみへだてしかしこの峡に

なほかもモートルとゞろにひゞき

はがねのもろ歯の石噛むま下

そこにてひとびとあしたのごとく

けじろき石粉をうち浴ぶらんを

あしたはいづこの店にも行きて

一車をすゝめんすべをしおもふ

かはたれはかなく車窓によれば

野の面かしこははや霧なく

雲のみ平らに山地に垂るゝ

●図書カード

Chapter 1 of 1