Chapter 1 of 1
Chapter 1
人よ、攀ぢ難いあの山がいかに高いとも、
飛躍の念さへ切ならば、
恐れるなかれ不可能の、
金の駿馬をせめたてよ。
登れなほ高く、なほ遠く。たとひ賢しらに
なんぢが心、山腹の
泉のそばを慕ふとも、
悦はすべて飛躍である。
途のなかばにとまる者は、やがて途に迷ふ。
かつは苦みかつ悶え
錯ち怒ることあつて
燃立つ心に命がある。
きのふの目標、あすの日は途の障礙ぞ、
籠の戸いかに固いとも、
思想はたえず相尅し
とはに盡きぬはその饑渇。
變化あれよ、向上あれとは、この世の大法、
不動の今がいかにして、
現世の榮を引きはす
大コムパスの支點となる。
過ぎし世の智慧といふもの何の益かある、
授くるものは梭櫚の葉の
危なげも無い勝利のみ。
これを越えて飛べ、熱烈の夢。
人苟も飛躍せば、たえず己に超越せよ。
われとおのれに驚けよ、
頭果してこの熱に、
堪へるか否かを問ふ勿れ。
不斷の慾のたえまない人の心を、
攀ぢ難い山の上から、ましぐらに、
未來めがけて不可能の、
金の駿馬は推し上げる。
●図書カード