Chapter 4 of 28
夫の影
東晋の董寿が誅せられた時、それが夜中であったので、家内の者はまだ知らなかった。
董の妻はその夜唯ひとりで坐っていると、たちまち自分のそばに夫の立っているのを見た。彼は無言で溜め息をついているのであった。
「あなた、今頃どうしてお退がりになったのです」
妻は怪しんでいろいろにたずねたが、董はすべて答えなかった。そうして、無言のままに再びそこを出て、家に飼ってある籠のまわりを繞ってゆくかと思うと、籠のうちのが俄かに物におどろいたように消魂しく叫んだ。妻はいよいよ怪しんで、火を照らして窺うと、籠のそばにはおびただしい血が流れていた。
「さては凶事があったに相違ない」
母も妻も一家こぞって泣き悲しんでいると、果たして夜が明けてから主人の死が伝えられた。