Chapter 1 of 56

この長詩を書くための材料に

本棚を熱心にかきまはしたが

探す本は発見らない

黒表紙で五十頁余りの

吉田りん子といふ詩人の

『酒場の窓』といふ詩集だ、

捨て難いものがあつて

時々本棚の整理で本を売り飛ばす時も

傍に除けてをくのだから

何処かにまぎれ込んでゐるに相違ない

私は彼女を『奇蹟の女王』と名づけてゐる。

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