Chapter 1 of 10

杖            五〇円

笠           三三〇円

べんたう行李       五五円

荷物行李(おひずる)  三〇〇円

首掛袋          八〇円

鈴           二五〇円

数珠          二五〇円

札箱           五〇円

お札           二〇円

納経帖         一〇〇円

脚絆          一五〇円

白衣          四五〇円

以上のへんろ装束、並びに、持道具一切を、われ/\、四国第一番の札所は、阿波、霊山寺門前の浅野仏具店で調へることができた。

その前日の午後、神戸から乗つた“あきつ丸”を小松島で下りた途端、その汽船発着所の待合室にたま/\みいだした広告……それによつて、われ/\、その浅野仏具店といふ、おもひもよらぬ器用なものゝあるのを知つた。……といふことは、そこへ行きさへすれば、へんろ装束一切が、右からひだり、簡単に、すぐにでも間に合ふであらうといふことが、われ/\に、おのづから了解できたのである。

すなはち、

――大丈夫だよ、君。……何も心配するがものはなかつた……

と、ぼくは、同行、池田吉之助君をかへりみた。

――さうなんですなァ。……安心しました、これで……

と、東京出発以来、いかにして調達すべきかと、それをばかり苦にしつゞけた池田君は、太だ、正直に、惜みなく、口もとをほころばした。

が、そのあと、その広告のちかくに掲げられた告知……小松島保安部、小松島巡査派出所、及び、関西汽船株式会社名による乗客への注意書は、もッと、太だ、われ/\をよろこばした。

なぜか?

“――船内でのインチキ賭博には手を出さないで下さい。絶対に勝てないばかりか、刑事上の罪になります……”

といふ一トくだりの文句をその中にみつけたからである。

“――絶対に勝てないばかりか……”

なか/\、素直に、かうはいへるもんぢやァない……

――よきかな、四国……

ぼくは、ひそかに、ぼくにいつた。

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