Chapter 5 of 60
八月七日
晴―曇―雨。
護国神社の太鼓と共に起床。
いろ/\洗濯する、同時に句も洗ひだした!連日の謹慎はやゝ沈静にしてくれた。
「忍ぶものは救はるべし」、おちつけおちつけ、落ちついて堪へ忍べ。
銭がないと(それは多くの場合、ふしだらから来る、)心にもない不義理をする、すまないことが多い、今日も電燈料集金員さんに申訳けなかつた、すみませんすみません。
タバコがタバコ屋にだいぶ潤沢に出廻るやうになつた、これだけでも人心がくつろぐ、世上にゆとりの気分がたゞよふ。
私は私の胃袋が大きいことをこのごろことに痛切にあさましく感じないではゐられない、あさましいかな!
よいおしめりがめぐまれた、日にまし涼しくなる、日中は夏、そして夜間は秋だ。
けふはめづらしく句がたくさん出来た、一日三十句は多すぎるが、めつたにないことだ。
過去に執する勿れ、自我を捨てろ、我執放下着。
夜、酔つぱらひが近づいて呼びかけた、私はぢつとして動かなかつた、善哉善哉、其調子其調子!
長生すれば恥多しといふ、あゝ私は生き過ぎてゐる、あまりに恥が多い、恥の多い一生、ただ幸にして、私はまだ恥を失はない。
不眠、明方ちかくまで睡れなかつた、無門関を読んだ。