Chapter 3 of 44
一月三日
曇。
寒い、雪になりさうな空模様。
けさは新聞がない(定休だから仕方ないが物足りなさを感じる)、けさはまた湯にもはいれない(湯銭がないのである)。
湯町にゐて湯にはいれないとは、みじめすぎる!
そこらを歩いてHさんの店に寄る、不在、新年早々借金しないでかへつてよかつた、やれ/\。
窓のうちあたゝかに落ちついて読書、とにかく米があり炭がある。……
午後、和田君に誘はれて、宮野の阿川君を訪ねる、汽車賃も煙草銭も出して貰つて恐縮々々。
阿川邸は落ちついた旧家のよさがあつた、客としては和田君、藤井君、村田君、そして私、よく食べよく飲んだ、暮れるころから、同道して山口へ、矢島さんのところでまた御馳走になり、中原君兄弟もいつしよに繰り出してS軒で騒いだ、……たうとう方角を失ひ場所を失ひ、自分を失つてしまつたが、……什郎さんにタクシーで送つて貰つた。……
本年最初の愚劣だつた!
※水の流れるやうに、或は雲のゆくやうに、風の吹くやうにありたいと考へてゐた、このごろは太陽の心を考へてゐる(澄太君が逓友新年号の扉に太陽の使者を書いてゐる)、日光のやうにあまねく惜しみなくうらゝかでありたいと思ふ。※自省が自縛であるやうでは、ホンモノではない。※他己迎合はあさましいが、自分に媚びることはヨリあさましい。※友情に甘えるな、自分を甘やかすな。※無理のない、ほがらかな姿、自然な、すなほな姿。 さういふ身心を持してゐたい。