Chapter 1 of 1

Chapter 1

きその日は思むすぼれ、とぼとぼと

馬を進むる憂き旅路、これも旅かや

まのあたり、路のもなかに「愛」の神、

巡禮姿、しほたれて、衣手輕し。

うれはしき其かんばせは、さながらに、

位はがれしやらはれのやつれ姿か、

憂愁の思にくれて吐息がち、

人目を避けて、うなだるゝあはれの君よ。

ふとしもわれを見給ひて呼び給ふやう、

『われは、今、かの遠里をはなれ來ぬ。

さきにはそこに汝が身の心の臟をぞ

置きたれど、新の悦得させむと

持ち來りぬ』とのたまひつ、忽ちわれに

憑きたまひ、消え失せたるぞ不思議なる。

●図書カード

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