Chapter 1 of 1
Chapter 1
私の行手に横たわっていた白い墓が今度は起き上ってじっと私の顔を見ている私にはそこにゆくより路がない。どうせ卑俗な 夢がたみだ私の霊魂の全部にぐにゃぐにゃした笑顔がくっつき私の両側はどうせ苦悶の姿ばかりだだが此のデリカなかかり合いにはどうせ奴らのぴくついた神経では何としても 防げない精神力の強さがあるどうしようもない苦しみいつなくなろうとも果しれぬ憂鬱どこに行っても不具者らのうめき声の堆積を見せつけられ私はやがての後のつまらないあがきを求めていたのだ空に向って生きようと折角両手をひろげた木も十月にはその手をもぎとられるあの姿のない風にさえも風は烈しい痛みを持っているのに相違ない熱情のおりのおりの底からだまって灰色の眼を光らせている――
嵐の後のかなしい植物らの呪咀、怨嗟の声地の底には根と根の沈潜したみにくい闘争があり、空には太陽と月のじれったい戯れがあるどうして此のわなの中からはい上ろうどうして此の荒縄を断ち切ろうどうして此の肉と心とのさかいを解易く区別出来よう。
いいや一切の 地の上の生物、無機物、有機物あらゆる組合わされたもののかみあいが面白く切なげに展開するのはそれはそうしなければ生きられぬ奴らのどうにもならないくさびがあるからだやがて邪魔になればほうられるやがてうるさく思われれば捨てられる
●図書カード