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ライギット・パズル
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ライギット・パズル
ドイルアーサー・コナン
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译文 Pagera AI
原文 Public Domain
Chapter 3 of 4

3

「おや!」と警部が声を出す。「先生はいずこに?」

ホームズの姿がなかった。

「ちょっと待てよ。」とアレク・カニンガム青年が言った。「あいつ頭がおかしいんじゃないのか。一緒に来いよ、親父、どこ行ったか探すんだ。」

ふたりは部屋を飛び出していったので、置き去りにされた警部と大佐と私は、互いに顔を見合わせた。

「自分も、アレク坊ちゃんと同じような気がします。」と警部。「ご病気のせいもありましょうが、私には――」

と言い切らないうちに、突如叫び声が。「出会え、出会え! 一大事だ!」その声が友人のものだと気づいて、私は戦慄した。我を忘れて部屋から踊り場の方へ駆けてゆく。その叫びは低いうめき声へと変わったが、その元は我々が初めに入った部屋からだとわかった。私は飛び込むや奥の化粧室へと躍り込んだ。するとカニンガム親子が床に倒れたシャーロック・ホームズの身体の上から覆い被さっていて、青年が両手でその喉を絞め、老人がその手首をねじ曲げていた。すぐさま我々三名が友人からそやつらを引き離すと、ホームズはふらふらと立ち上がった。その顔は真っ青で、目に見えて疲れ切っている。

「この者たちの逮捕を、警部。」と声を絞り出す。

「何の罪で?」

「当家の御者ウィリアム・カーワン殺害の件で。」

警部は当惑のていで友人を見つめる。「そんな、まさか、ホームズ先生。」というのがやっとの言葉で、「本気じゃないでしょう、そんな――」

「ふん、君、その顔を見たまえ。」とホームズは言い捨てる。

人間の顔がこんなにありありと自白するところは、私も見たことがなかった。老人はじっとして心ここにあらずといった感じで、険しい顔には重苦しげな表情が浮かんでいた。かたや息子の方はあの目立つ威勢もどこへやらで、危険な野獣の獰猛さが黒い目のうちに光り、整った容貌もゆがんでいた。警部は何も言わずに扉の方へと歩み寄り、呼子を吹いた。ふたりの巡査が応じてやってくる。

「やむを得ません、カニンガムさん。」と警部。「とんでもない間違いとわかるのを信じてますが、おわかりいただ――な、何を? おろせ!」警部が手ではたくと、引き金の引かれようとしていたリヴォルヴァが、青年の元から床にがちゃりと落ちる。

「保管を。」とホームズが素早く足で踏みつける。「きっと裁判で役に立つだろう。だが本当に欲しいのはこれだ。」友人はややしわになった一枚の紙切れを掲げる。

「例の残りですね!」と警部は声を張り上げる。

「いかにも。」

「それをどこで?」

「あるはずと踏んだところで。すぐに全容を明らかにしよう。思うに大佐、あなたとワトソンはとりあえずお帰りを。僕も遅くとも一時間後には戻ります。警部と僕はこの犯人どもと少々話をせねばなりませんが、きっとお昼時にはまたお目に。」

シャーロック・ホームズは約束通り、一時頃に大佐の喫煙室にて我々と合流した。初老の紳士を同伴しており、その人物は紹介によると、最初の強盗現場となった屋敷の持ち主アクトン氏だという。

「このささいな事件の解明に、アクトンさんも立ち会って頂きたく。」とホームズ。「当然この方も仔細に強い関心がおありでしょうから。すいません大佐、僕のような疫病神に時間を取られてご迷惑かと。」

「それどころか。」と大佐は興奮のていだ。「この上ない名誉に思う。あなたの仕事ぶりの見学を許されるなんて。正直のところ、私の予想をはるかに超えるもので、あなたの結論についてもまったく何と言ってよいか。」

「これからの説明で幻滅されるのではと心配ですが、その手際の包み隠さぬことを常に旨としております。友人のワトソンにも、知的興味を持つ誰に対してもです。ですがまず、化粧室でやられたことでまだいささかくらくらしてますので、ブランデイの力を一口お借りできればと、大佐。近頃は体力が消耗してまして。」

「ああいう神経の発作はそれきりであればいいが。」

するとシャーロック・ホームズはめいっぱい笑う。「そのことはおいおいと。」と言って、「では事件の説明を順々にお見せしましょう、結論に至った様々な点も示しつつ。推理にはっきりしないところがありましたら、どうぞ口を出してください。

探偵術に最重要なのは、数ある事実から周辺のものと本質とを見極める能力です。でなくては、力と気は集中せず散漫にならざるを得ません。さて、この事件では初めから僕の頭のなかに迷いはわずかばかりもありませんでした。事件全体の鍵は、死者の手にある紙切れのなかに求めねばならぬと。本題へ入る前に注意を向けて頂きたいのは、アレク・カニンガムの話が正しく、襲撃者がウィリアム・カーワンを撃ったあと〈すぐさま〉逃げたのなら、使者の手から紙を破り取ったのはどう考えてもその人物でないことになります。ですがその人物でないとしたら、アレク・カニンガムに相違ありません。老人が下りてきたときには使用人が数名、現場に居合わせてましたから。この点は単純ですが、警部は見落としを。州の名士はこの件に関係ないという頭があったためです。ところで僕は、自分の旨として、いかなる思いこみもせず、事実がどこに至ろうと素直についてゆくことにしています。そこで捜査の最初の段階からアレク・カニンガムの関与をやや疑っていた次第なのです。

それから僕は、警部の示してくれた紙切れをつぶさに調べてみました。すぐにはっきりしたのが、これがたいへん珍しい文書の一部だということです。これ、いかにも裏がありそうに思えませんか?」

「字面がやけにいびつだな。」と大佐。

「さよう。」とホームズが声を張る。「これがふたりの人物によって二字ずつ交互に書かれたこと、それはまずもって間違いありません。この『時の』や『分前』の撥ね払いが力強いのに対して、『十二』や『十五』の弱々しさ、このことはすぐご納得頂けますね。これらの字のごく簡単な分析から、あなたにも最大限確信を持ってわかるはずです。この『教え』と『るぞ』が強い筆跡によるもので、この『てや』は弱いと。」

「なるほど、火を見るより明らかだ!」と大佐は声を上げる。「いったい何のために、ふたりの男はそんなやり方で一通したためたんだ?」

「むろん用件がよからぬことだから、そして相棒を信用しない片割れが、何をするにもそれぞれ等しく分けるべきだと強く考えていたからです。さて、そのふたりのうち、『時の』や『分前』を書いた方が首謀者なのは明らかです。」

「どうしてそうなる?」

「両名の筆跡の特徴を比べるだけで引き出せましょう。裏付けとしては、それより確かな根拠もあります。この紙切れを注意してお調べになれば、強い筆跡の方が先に書かれ、もう一方が埋められるよう間を空けた、という結論にたどり着けるでしょう。ですがその間がみなじゅうぶんとは言い難いため、ご覧ください、あとの男が『時の』と『分前』のあいだに『十五』を押し込んでいます。つまりこのふたつは先に書かれたということ。先に書いた男こそ、疑いなく本件を思いついた人物です。」

「素晴らしい!」とアクトン氏が声を張る。

「まだ序の口です。」とホームズ。「核心に向かうのはこれからなのです。みなさんはご存じないかもしれませんが、筆跡から人物の年齢を割り出すのは、専門家ならかなり正確に行えます。通常、それなりの精度で人を正しい年代に置けまして、もっとも通常というのは、病気や体調不良の場合はその人物が若くとも老年の手振りそっくりになるからで。この件では、一方は太く強い筆跡で、もう一方は傾き加減の字面、しかもやや崩しているのにそれでも読みやすい。これを見るに、前者は若者で、後者は年寄りだがそれほど老いぼれてもいない人物と言えましょう。」

「素晴らしい!」アクトン氏は再び声を張る。

「ところがより繊細でさらに惹かれる点がもうひとつあります。これらの筆跡には、共通するところがあるのです。つまりふたりは血縁にあるということです。この古風な字がみなさんにもわかりやすいと思いますが、僕には同様の細かい点が多々わかります。一家の癖がこの筆跡標本からたどれることは疑いようもありません。もちろん今みなさんに話しているのは、この紙を調べた結果の主な点だけです。みなさんよりも専門家の興味を惹きそうな演繹が他にも二〇と三あります。こうしたことから、カニンガム親子がこの手紙を書いたという印象が、僕の頭のなかで深まることになったのです。

ここまで来れば、次の行動はむろん、犯罪の仔細を調べること、そして今のことがどれだけ役立つのか確かめることです。警部とともに屋敷へ出向き、見るべきものをすべて見ました。死者の傷は絶対の自信をもって断言できますが、四ヤードは離れて撃たれたものです。衣服に火薬の焦げはありません。よって明らかに、アレク・カニンガムは嘘をついています。ふたりがもみ合いのさなかに撃たれたというあの発言です。さらに、親子の発言は男が道に逃げた地点でも一致してました。しかしその地点には、あいにく底のぬかるんだ広めの側溝がありました。その溝のあたりに靴の跡らしきものがないことから確信できます、カニンガム親子はまたも嘘をついたばかりか、現場に謎の男などひとりもいなかったのです。

となれば、この妙な犯罪の動機を考えねばなりません。これに迫るため僕がまず解決しようとしたのが、先のアクトン氏のお宅への押し込みの理由です。大佐の話してくれたことから、こちらのアクトンさんとカニンガム家のあいだで裁判沙汰が続いていることは知っていました。むろんすぐに浮かんだのが、書斎に侵入して、訴訟で大事になりそうな書類でも盗るつもりだったのか、ということです。」

「いかにも。」とアクトン氏の発言。「そのつもりだったのは、疑う余地もない。向こうの現地所の半分について、わしには明白な請求権がある。もしやつらが一枚しかない書類を見つけようものなら――幸い弁護士の金庫に入っておったが――やつらはわしの訴訟を台無しにしたに違いない。」

「でしょうね。」とホームズはにやりとする。「これは危険で向こう見ずな企みでしたが、僕はここにもアレク青年の影がちらついていると思います。何も見つからなかったため、ただの強盗に見せかけて疑いを逸らそうとしました。だからこそ手当たり次第に持って行ったのです。以上のことはじゅうぶん明白ですが、いまだぼんやりとしたところも多々あります。何よりも僕が手に入れたかったのが、この覚え書きの失われた部分です。確かなのは、アレクが死者の手から引きちぎったことで、その化粧着の懐にねじ込んだと見てほぼ間違いないでしょう。そこ以外のどこに隠せましょう? 残る問題は、まだそのなかにあるのかどうか。見つけようと骨折っただけの価値はありますし、その目的のために僕らはみんなして屋敷へ出向いたのです。

カニンガム親子が合流したところは、思い出してください、勝手口の外でしたね。むろん一番大事なのは、この紙の存在を思い出させないこと、気づかれたら最後、きっと即座に処分されましょう。そして僕らがそれを重要視していると警部がばらしそうになったまさにそのとき、世界一幸運なことに、僕が発作のたぐいでその場に倒れ、そして話が逸れたのです。」

「なんと!」と大佐は笑いながら声を上げる。「我らの心配も徒労で、あの発作も嘘だと言うのだな?」

「医者の身からしても、あっぱれな出来だよ。」と私はこの男を驚きの面持ちで見つめる。その立ち回りの早さでいつも煙に巻かれているのだ。

「それはしばしば功を奏するやり方で。」と友人。「それから元に戻すと、僕は何とか手を使って、それなりに巧みだったと思うのですが、カニンガム老人に『十二』という言葉を書かせて、そこでこの紙の『十二』と比べてみたというわけです。」

「私はなんて馬鹿者だ!」と私。

「君が僕の不調を気遣ってくれたのはわかった。そうと知りながら君の心を痛めさせてしまって申し訳ない。それから全員で階段を昇り、部屋に入って、扉の裏にかけてあった化粧着を見ましたので、台をひっくり返してしばらくどうにか注意を引きつけておいて、僕はこっそり戻り、懐を探りました。ですがつかんだその瞬間――予想通り懐の片方にありはしたのですが――いきなりカニンガム親子が僕につかみかかってきて、もしかするとその場で僕は殺されていたかもしれませんね、その素早い友の手がなかったとすれば。実際、今でもあの青年の喉を絞める手を感じますし、あの親は紙を僕の手から奪おうと僕の手首をねじったのですから、ふたりは僕に見破られたと悟っていたようで。絶対安全から絶望暗黒へと突き落とされたのだから、完全にやけになったわけです。

Chapter 3 of 4
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