Chapter 1 of 1

Chapter 1

須賀爺の面の憎さよ。

あの

額に寄する残忍の皺よ。

冷酷のまなざしよ。

憎らしき靨よ頬っぺたの穴よ。

須賀爺の面の憎くさよ。

今日も亦緯糸をたぐりしと叱りし。

解雇するぞとおどかせし。

そんなに叱るなよ。罵しるなよ。

おれは慣れないのだ。

機台の前に立つさえ怖いのだ。

あの杼の音箴打つ音にも驚くのだよ。

須賀爺の面の憎さよ。

おれのみが憎むのではない。

みんなだ。

時間が十二時を打っても機械が止まっても

汽笛の鳴らぬ間は

飯食いにやらぬと出口に立ち塞がる。

あの面の憎くさよ

(『新社会』一九一六年六月号にN正吉名で発表 一九二〇年五月日本評論社刊『どん底で歌う』を底本)

●図書カード

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