
伊藤野枝 · Japanese
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伊藤野枝 · Japanese
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Original (Japanese)
生田さん、私たちは今回三百里ばかり都会からはなれて生活して居ります。 私達のゐます処は九州の北西の海岸です。博多湾の中の一つの小さな入江になつてゐます。村はさびしい小さな村です。私たちは本当にいま東京から大変遠くはなれてゐるやうな気がしたり、それからまた、でもかうして原稿用紙に向つてペンを運んでゐますと矢張り東京にゐるのだと云ふやうな気もします。けれども矢張り遠いのです。お友だちのことなんか考へてゐますと夜分にも会へるやうな気もしますが一寸はどうしても会へないのです、あの窮屈な汽車の中に二昼夜も辛抱しなければならないのだと思ひますと、何だかあんまり遠すぎるのでがつかりします。一寸かへつて見ると云ふやうな自由がきかないのです。 此処は私の生れ故郷なのです。けれども矢張り私たちにはこんな処にどうしても満足して呑気に住んではゐられません、かうやつて家にゐますと全で外からは何の刺戟も来ないのですもの。単調な青い空と海と松と山と、と云つたやうな風でせう。此処で生れた私でさへさうですから、良人などは都会に生れて何処にも住んだことのないと云つてもいゝ程の人ですからもう屹度つまらなくて仕方がないだらう

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